【論文・研究の面白さ】今も昔も大事なことは変わらない。論文や研究から学べること

日記
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田口塾の西口です。

田口先生が書かれた論文『享保期在町村役人の地域史観と経済観 ―下総国香取郡佐原村伊能景利の文書編纂物を通じて―』を読んだので、感想を書いてみたいと思います。

私は歴史の話が全然得意ではないですし(関ヶ原の戦いが1600年か1800年かも曖昧なレベル)、論文を読み慣れているわけでもないですが、田口先生の論文は思いの外読みやすく理解しやすい内容だったので、最後までするすると読み進めることができました。

伊能景利とは

中心人物である伊能景利(いのうかげとし)は、地図を作ったことで有名な伊能忠敬(ただたか)の義理の祖父にあたる方です。

現在の千葉県佐原市あたりは、昔は”北総の小江戸”と呼ばれるくらい商業の栄える土地だったのですが、景利以外があまり記録を残していなくて、景利の『部冊帳』という記録物が貴重な資料になっているらしいです。

まあ日記つけたり調査を書きまとめたりするのって大変ですからね。偉大です。

伊能忠敬が地図を作ったのも、そんな景利おじいちゃんを見て「自分も何か残したい」と思ったことが後押ししたと言われています。

景利は村の役人さんで、役人としてどう政治をしていくか、どう経済を回していくかを模索しながら、その中で行った調査や様子を『部冊帳』に記録していったようです。

ストーリーが面白い

所感としては、冒頭にも書きましたがかなり読みやすくて、短編小説を読む感覚で楽しんで読めました

特に、村の商人さんたちが市場のルールをめぐって争うシーンはとても興味深いストーリーでした。

ざっくり説明すると、村では定期的にマーケットが開催されていたのですが、「マーケットが開かれる日には、そのマーケットの場所以外では店を出してはいけない」というルールが実はありました。
ほとんど意識されず忘れ去られていたルールだったのですが…

街が栄えてきて人々が常設店舗を出すようになり、マーケットの日でもいつものようにお店を出していると、マーケット側の人たちがいきなりそのルールを引っ張り出してきて「今日はマーケットの日だから店を閉じろ!」と押しかけてきたのです。

それをきっかけに、マーケットの日の取り締まりが過度に厳しくなったり、どこまで商売禁止エリアなのかという問題が発生したりしていく、という話です。

そのストーリーを追っていくのも面白かったし、それに対する景利の考察(を田口先生が考察したもの)を読むのも、共感と学びが多くて良かったです。

景利がこの争いを見て「役人たちの慢心がいけない」と指摘するところは納得感しかなかったですね。

もちろん当事者だったら面白がってはいられませんが、物語を知る側としては、それこそドラマ見たさに読める感覚でした。

大事なことは今も昔も同じ

論文の中から、現代にも通ずる学びがたくさんあったなと思いました。

例えば景利は、先程書いたように「役人の慢心はいけない」と考えていました。

論文の中では、人の上に立つ者はこのような人物であるべきだと書かれています。

・自身以外の立場になって考えられる
・長期的な視点で物事を考えられる
・リスクを想定できる
・慢心ではなく冷静な分析によって問題に対応できる
・歴史や、昔の出来事がどんな風に今に影響しているかを知っている
・今までのやり方を尊重しながら、新しいものを柔軟に取り入れる
・先見の明を持つ
・交渉力を持つ

これっていつの時代でも共通することですよね。

むしろ、変化の激しい現代でこそ必要とされる素質かもしれません。

論文を読むことでこんな学びがあるとは全く想定外でしたが、下手な自己啓発本を読むよりよっぽど勉強になったなと思いました。

論文は人が書いたものだからこそ面白い

ストーリーや学びの他にも、論文を読んで面白いなと思ったことがあります。

それは、田口先生の着眼についてです。

論文の冒頭でも書いていますが、田口先生は景利の「地域内の調停役」としての役割に焦点を当てています。

同じ景利を研究された別の方の論文では、景利が情報を集めることで自分・お家の立場を守ろうとしたところに焦点を当てている、つまり平たく言うと”他に負けないための”働きをしていたと論じているとのことです。

それに対して田口先生の論文のほうは、調停役ですので、”第三者目線で争いに介入してあげて解決する”働きをしていたという面に注目しているのです。

これは私の完全な主観ですが、他と争うよりも自身のいるところをより良くしようとするような考え方を同じく持っている田口先生だからこそ、そこに着眼できたのかなと感じました。

また、景利が村役人の内面性が政治に大きく影響を与えていると考えていたことや、妻子を持つ1人の零細商人に対して景利が同情心を持ったことも、利他精神を同じく持つ田口先生らしい考察だと思います。

零細商人の話に関しては、田口塾を営む田口先生ならではの視点もあったかもしれません。

人が何か問題意識を持ったり興味関心を抱いたりして研究を始めるときには、その研究者の性格や考え方が多少なりとも研究に入り込むものだなぁと思いました。

研究や論文というと少し近寄りがたい感じがするかもしれませんが、本来はもっと研究者の血の通った、温かみのある書き物なのかもしれませんね。

こうした学問や論文に本格的に触れていくのは大学からですが、大学での学びは改めて面白いですよ!!