田口塾の西口です。
上智大学 総合グローバル学部の公募推薦を受ける受験生向けに、過去問の傾向に合わせた小論文の問題を作成しました。
小論文は対策材料を集めるのが大変だと思いますので、ぜひご活用下さい。
解説が必要な方、添削をご希望の方はぜひ田口塾へお問い合わせください。
問題
[設問]
以下の課題文は、総務省が公表している平成29年版情報通信白書の中の、『世界におけるICTインフラの広がりとインフラ輸出の現状』の抜粋(一部改変あり)である。この課題文の内容を踏まえたうえで、ICTがSDGsの達成に寄与すると考えられる具体的な事例を挙げながら、デジタルディバイドを解消することの意義について説明しなさい。
(800字、60分間)
[課題文]
2015年9月に国連で採択された持続可能な開発のための2030アジェンダでは、貧困を撲滅し、持続可能な世界を実現するために17のゴール・169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を掲げている。発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサルなものであり、取組の過程で、地球上の誰一人として取り残さないことを誓っている。我が国においても、2016年5月に安倍総理を本部長とする「SDGs推進本部」を立ち上げ、国内外の取組を開始したところである。
持続可能な開発を達成するためには、経済成長、社会的包摂、環境保護という3つの主要素を調和させることが不可欠であるとされており、ICT(Information and Communication Technology)はSDGsを達成する上でのエンジンとなり、グローバルでの実現に寄与するものと捉えられている。
地球上のあらゆる地域にインターネットを広げ、デジタルディバイドを解消することは、SDGsを達成する上で重要な要素であり、国際的に取り組まれている。
2016年4月に日本で開催されたG7香川・高松情報通信大臣会合の共同宣言では、「ICTへのアクセスの向上」「情報の自由な流通の促進と保護」「イノベーションの促進」「ICTの活用による地球規模課題及び機会への取組」が4本柱として掲げられた。「ICTへのアクセスの向上」の中でデジタルディバイドの解消が取り上げられており、「2020年までに新たに15億人のインターネット利用者を生み出すための、マルチステークホルダーによる取組を誘発することを目指す」としている。
世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)では、経済成長や社会課題解決への貢献が期待されるインターネットを、現在でも40億人以上が利用できない状況にあるとの問題意識のもと、Internet for Allという取組を進めている。アフリカ、南米、アジアの3つの地域での3年間のプログラムにより、2019年末までに少なくとも6,000万人の新規インターネット接続を実現することを目標としている。取組を通じて、官民連携を基盤として、拡張性のある、他の地域にも適用可能な、インターネットへの接続を促進するモデルの開発が目指されている。
世界銀行(World Bank)では、2016年1月に「デジタル化がもたらす恩恵」(Digital Dividends)に関する報告書をとりまとめた。同報告書では、インターネットや携帯電話などのデジタル技術は急速に普及しているものの、デジタル化による恩恵は期待よりも小さなものとなっていることを指摘している。デジタル技術の恩恵を誰でもどこでも享受できるようにするためには、インターネットへのアクセスなど未だ残るデジタルディバイドを解消するとともに、国が事業環境を整えたり、従業者のスキルを新たな経済に適合させたりするなどの補完的な取組を行っていく必要があることを指摘している。世界銀行では、同報告書における提言や国連2030アジェンダのSDGsの達成を支援するために、Digital Development Partnership(DDP)を立ち上げた。DDPでは、官民連携によりデジタル開発戦略と、計画の明確化と実施に関しての開発途上国への支援を行う。先進国のパートナーと先進的なグローバルIT企業による支援が行われ、世界銀行及びその他の開発パートナーからの融資や助成金が提供される。
[出典]
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc144210.html
模範解答
模範解答
課題文中では、ICTはSDGsの達成をグローバルで実現することに寄与すると述べられている。つまりICTを活用すれば、SDGsを達成するための活動を局地的ではなく地球規模で行うことができるようになる。しかしながら、ICTへのアクセスがない地域や人々は当然ながらその恩恵を受けることができないため、情報格差はさらに別の格差を生み出す危険性も孕んでいると言える。よって、デジタルディバイドを解消することの意義は、SDGsの達成に向けた活動が行き届かない地域をなくすことにあると私は考える。
ICTがSDGsの達成に寄与する具体的な事例としては、子どもたちの教育にオンライン教材を活用することが挙げられる。これまで教育を提供するには、学校や教室などの安全な空間、十分な知識を持った教師、諸費用など、様々な条件が必要であった。そのため特に発展途上国においては、教育を受けられていない子どもたちが多くいる。そこで、子どもたちに利用可能なデバイスを持たせ、録画した授業を視聴させたりアプリケーション教材を使って学習できるようにしたりすれば、時間や場所に関わらず子どもたちが教育を受けられるようになる。教師を雇うための人件費も、教室を維持するための費用もかからなくなる。
しかし、これを実現するには、デバイスや教材の開発と普及、加えてデバイスを使用するためのITインフラを整える必要がある。オンライン教材の活用の大きなデメリットは、こうしたICTにアクセスできる地域や人々はその恩恵を受けられるが、そうでない地域や人々は教育面でさらに遅れを取ってしまうことだ。したがって、デジタルディバイドを解消し、世界のどの地域にでもオンラインで教育を提供できるようにすることで、地球規模で教育格差を解消できるチャンスとなるに違いない。
(754字)
補足解説
・デジタルディバイド:情報格差とも訳される。インターネットやそれを活用するための機器にアクセスできる人々・地域と、できない人々・地域の間の格差を指す用語。ディバイドは英単語「divide」が「分ける」という意味を持つように、格差を意味する語として使われている。
・ICT:ITはInformation Technology(情報技術)、ICTはInformation and Communication Technology(情報伝達技術)。前者はより包括的な技術全般のことを指し、後者はよりCommunicationとしての側面が強調されている。
・模範解答で示したオンライン教材以外の事例としては、医療情報の提供や遠隔診療ができる、生体認証端末でのキャッシュレス決済によって防犯対策と経済活性化が図れる、自然災害や気候変動の情報を得ることで対策を打てる、企業で業務システムを導入することで作業効率化と正確な業務管理ができる等が考えられる。
より詳細な解説や、ご自身の書いた小論文の添削をご要望の方は、ぜひお気軽に田口塾へお問い合わせください。オンライン指導も可能です。
以上、田口塾の西口でした!