田口塾の西口です。
私は塾で推薦入試系(出願書類、面接、小論文など)も担当しているので、今回は一番ベーシックな「志望理由書の書き方」について書いてみたいと思います。
自分でその大学を志望しているにも関わらず、志望理由で何を書いたらいいかわからないという人は多いです。
ですが、その悩みの実情としては
「こんな理由でいいのかわからない」
「理由はあるけど、どう書きまとめていいかわからない」
というのが大半だと思います。
しかも志望理由書は、それ単体で見られるというよりは、そこに書いたことを面接で深堀りされたり、小論文の試験と一貫性を持たせなければならなかったりと、他の試験にもつながる内容にしておかなければならないことが多いです。
しかし逆に言えば、志望理由書を書く時点で自身の志望動機・将来展望・それを目指すに至った過去の経験を整理できていれば、その他の試験にも役立てられるということでもありますね。
というわけで、今回は私がいつもやっている「志望理由書の書き方」レクチャーを公開して、入試対策の大きな一歩目を踏み出すお手伝いができればと思います。
一応ご認識いただきたいのは、これを読めば志望理由が完璧に書けるようになる!というものではないということです。
こういった長文記述系は、他の人の添削があってこそ良いものが完成するものです。
ただし、「自力で初版を書くまでの基礎知識」は、この記事でかなりわかるのではないかなと思います!
前提:自分の中に時間軸を持つ
どんな試験においても最も重要なことは、質問に答えられていることです。
当たり前ですが、学科試験ではない出願書類や面接になると、意外とこれが難しいんですね。
では、「志望理由を答えなさい」と聞かれた場合、何を答えるべきでしょうか?
それを考える上で前提として重要になってくるのが、過去・現在・未来の時間軸の中で相手がどの時点の自分を知りたいのかを正しく把握することです。
ここでいう時間軸というのは、
未来=将来の夢、目指したい職業
過去=それを目指すようになったきっかけ・理由
現在(近い未来)=その夢を目指すために大学で学びたいこと(→志望理由)
ということになります。
よって、志望理由を聞かれている場合には、まずは将来の夢や自身の経験よりも、大学で学びたいこと・学べること、大学の魅力に重点を置いて書くべきです。
大げさに言うと、本学の志望理由は?と聞かれて「学校の先生になりたいからです」と答えてしまうのは、ア~エから選びなさいという設問で3と答えてしまうようなものなのです。
もちろん将来の夢や過去の経験も書く必要はあるのですが、それらはあくまで大学での学びや魅力を説明するためのサブ要素であることを心得なければなりません。
大枠:志望理由の書き方2パターン
志望理由の書き方としては、大きく2パターンあります。
①その大学を志望した明確なきっかけがある場合
②それがない場合
①のほうは、例えば恩師がその大学出身だったとか、地元だとか、大学が運営しているプログラムに参加したとかが挙げられます。
また専門学部の場合は、その学部に進めば職業も決まるというケースが多いと思うので、「その職業に就きたいと思った」がここに当てはまります(医師を目指す医学部など)。
そういう時は、その職業を目指した理由もここで書いてしまった方が良いです。
明確にきっかけを言える場合は、[きっかけ→(後から知った)大学の魅力→なぜ良いと思ったか]という順番で書くのがいいでしょう。
後述しますが、大学の魅力は複数個書くのが望ましいので、
「貴学を志望したきっかけは、○○○でした。詳しく調べてみると、(大学の魅力)だとわかり、・・・な私にとっては最適だと感じました。また、(大学の魅力)という点は、・・・な私には非常に役立つと考えます。さらに、・・・・・・。以上の理由から、私は貴学を志望します。」
みたいな流れです。
②のほうは、明確なきっかけはないけどいろんな大学を調べた上で一番良さそうだったから、みたいな人が多いかと思います。
または、人に勧められてなんとなく目指し始めたとか、ちょっと動機が不純とかの可能性もありますね。
そういう場合は、[大学の魅力→なぜ良いと思ったか]をただ書き連ねれば大丈夫です。
「私が貴学を志望した理由は○つあります。第一に、(大学の魅力)という点です。これは・・・な私にとっては最適だと感じました。第二に、・・・・・・。以上○つの理由より、私は貴学を志望します。」
という流れになります。
中核:大学の魅力を語る
先述の通り、志望理由の核になるのは大学で学びたいこと・大学の魅力です。
詳しく言うと、
・その大学で学べること
・その大学ならではの設備や制度
・その大学の特色
など、大学の特徴がそれに当たります。
ここでポイントになるのが、大学のカリキュラム名や制度名、施設名など、固有名詞を使って書くことです。
そうすることで、大学への理解を示すことができます。
志望理由を書くときに必ず頭を悩ませるのが「他の大学ではなく、この大学じゃないといけない理由」を書けないという問題だと思います。
でも、他の大学じゃだめな理由なんてそんなに無いというのは、正直採点する大学側もわかっているのです(笑)
そこで重要なのは、他の大学じゃだめな理由ではなく、その大学をちゃんと理解しているか、深い興味や愛着があるかどうかということです。
よって、その大学が使っている用語や言葉を使ってあげて、理解や熱意を伝えてあげることが有効なのです。
「実習制度が非常に充実しているため」と書くより、「ABC実習や千葉実習施設などがあるため」(この例は架空ですが)と書くほうが、大学への理解や愛が伝わりますよね。
この大学の魅力については、3つ書くのが一番ちょうどいい量かなと思っています。
1つでは足りなくて、2つでもきっかけを別で書く場合・もしくは十分その2つについて語れればセーフ、4つだと若干多い気がします。
そんなに書けないという方、そもそも大学の魅力が思いつかないという方もいるかと思います。
そんなときは、大学についてホームページやサイト、パンフレットなどでたくさん調べて、大学側が魅力として打ち出していることを書くのが一番無難です。
どんな大学でも特色が必ずありますので、それを調べて、良いと思ったものを書くのがおすすめです。
逆に言うと、大学のことを全く調べずにこの志望理由を書くのはほとんど無理です。
しっかり調査して理解した上で、書いていきましょう。
ちなみに、志望理由で他の受験生と差別化できないのではないか、という悩みを持つ方もいるかもしれませんが、大学の魅力を書く部分では差別化できなくても全く問題ありません。
むしろみんなと同じ内容でも良いのです。
差別化は、この後のサブ要素で行っていきます。
サブ要素:なぜ魅力に感じたのか
大枠のところでも紹介したように、大学の魅力を書いた後には「なぜそれを魅力に感じたのか」を書く必要があります。
ここで、他の受験生と差別化を図ります。
前提のところでお伝えした時間軸で言うと、
未来=将来の夢、目指したい職業
過去=それを目指すようになったきっかけ・理由
を根拠に出して、魅力に感じた理由を説明していきます。
例えば国際系の学部で、大学の魅力が「留学プログラムが充実していること」だったとすると、以下のような文章が次に続きます。
未来=私は将来日本と海外をつなぐような仕事がしたいと考えているため、留学を通して異文化交流の経験を積めることは魅力的です
過去=高校1年生の時に1週間ほど、イギリスから来た学生のホームステイ受け入れを行いました。その際、異文化交流で学べることの多さを知り、大学では自身が留学に行きたいと思いました
また、未来と過去を組み合わせて書くこともできます。
私は将来、発展途上国の貧困問題の解決に寄与できるような仕事に就きたいと考えています(=未来)。それは、中学2年生の時にネパールを訪れた経験から貧困に苦しむ人々の存在を知り、国際協力によって解決したいと思ったためです(=過去)。よって、大学では留学を通して外国や異文化についてより深く学びたいです
このように、大学の魅力は他の受験生と同じでも、自分の過去や未来は他でもない自分のものなので、ここで十分差別化ができます。
中核として考えた3つ程度の「大学の魅力」それぞれにつきサブ要素をくっつければ、志望理由はほとんど完成です。
仕上げ:組み合わせる
大枠のところで紹介した流れに沿って中核とサブを組み合わせてみましょう。
ここでは、②その大学を志望した明確なきっかけがない場合 のほうでやってみます。
※大学の情報は全てフィクションです
私が貴学を志望した理由は3つあります。
第一に、LSA留学プログラムや留学先協定校の多さなど、留学制度が充実しているということです。私は将来、発展途上国の貧困問題の解決に寄与できるような仕事に就きたいと考えています。それは、中学2年生の時にネパールを訪れた経験から貧困に苦しむ人々の存在を知り、国際協力によって解決したいと思ったためです。よって、大学では留学を通して外国や異文化についてより深く学びたいです。
第二に、リベラルカリキュラム制度により、2年次まで文理関係なく授業を選択できることです。貧困問題などの国際問題の解決のためには多角的な視点から物事を洞察する力が求められるため、この制度は自分の目指す将来に直結するような学びが得られると感じました。
第三に、7つの学部が同じキャンパスに集まっており、様々な興味関心を持った学生と交流しながら学べる授業が多くあるということです。国際協力は多様な人との協働によって成し遂げられると考えているため、異なる専門やバックグラウンドを持つ学生とコミュニケーションを取りながら学びを深める経験を積みたいです。
以上3つの理由から、私は貴学を志望します。
これで494字です。
すごくベーシックな書き方ですが、無難かなと思います。
これでもう少し柔軟に書きたい場合は、ここから多少型を崩して編集していく感じになりますね。
また、ここから字数制限に合わせて削ったり増やしたりする場合もあると思います。
削ったバージョンだと、こんな感じになります。
私が貴学を志望した理由は3つあります。
第一に、LSA留学プログラムなど留学制度が充実していることです。私は将来、発展途上国の貧困問題の解決に寄与できる仕事に就きたいと考えているため、留学で外国や異文化についてより深く学びたいです。
第二に、リベラルカリキュラム制度があることです。多角的な視点から物事を洞察する力がつくこの制度では、将来に役立つ学びが得られると感じました。
第三に、7学部が同じキャンパスに集まっており、様々な学生と交流しながら学べる授業が多くあることです。国際協力は多様な人との協働によって成し遂げられるため、異なる専門を持つ学生と共に学びを深める経験を積みたいです。
以上3つの理由から、私は貴学を志望します。
312字です。
内容はほとんど変えず、中核・サブそれぞれをバランスよく削りつつ、かさばっている表現をなくしていくとこのくらいになります。
逆にもっと字数が必要な場合は、ネパールでの経験をもう少し詳しく書いたり、2つ目の理由のところで様々な授業の中でも特に学んでみたい分野を書いてみたりと、サブ要素を膨らませると良さそうですね。
そこは自分がアピールしたい内容を増やせばOKです。
最後に
以上が、私が持っている志望理由書の基礎ノウハウでした。
最初に書いたように、これを読めば誰でも志望理由書が完璧に書けるようになるというものではないですが、「ひとまずこれに沿って書いてみて、人に添削をお願いできるレベル」までは行けるのではないかなと思います。
あとは、さらっと流してしまいましたが、サブ要素に何を入れるかもけっこう悩む方多いですよね。
それについては、また別の記事で書きまとめてみようかなと思います。
私西口は田口塾で、志望理由書を含めた推薦入試の対策をやっていますので、気になった方・添削をご要望の方はお気軽にお問い合わせください!オンライン指導も可能です。
コメント
[…] 志望理由の書き方についてはこちらの記事を参照いただければと思いますが、書類は一度自分で書いたら先生など専門家に添削してもらい、修正して、また添削してもらい、修正して、というのを何度か繰り返す必要があります。 […]