田口塾の西口です。
上智大学 総合グローバル学部の公募推薦を受ける受験生向けに、過去問の傾向に合わせた小論文の問題を作成しました。
小論文は対策材料を集めるのが大変だと思いますので、ぜひご活用下さい。
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問題
[設問]
以下の課題文は、貧困の定義についての文書の一部である。これを読み、一般的に使われる「貧困」との違いを説明しなさい。また、それを踏まえたうえで、貧困削減のためにはどのような取り組みが有効であると考えられるか述べなさい。
(60分、800字以内)
[課題文]
貧困の定義には様々な議論があるが、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会 (DAC)が 2001年に取りまとめた『DAC 貧困削減ガイドライン』では潜在能力の欠如に着目し、貧困とは、経済的能力、人間的能力、政治的能力、社会的能力、保護能力の5つの能力が欠如している状態であるとした。この背景には、貧困を所得や消費などの経済的観点だけから捉えるのではなく、人間の基礎的な潜在能力(capability)、すなわち選択の幅や自由度が欠如している状態として捉え、貧困削減とは個々人の潜在能力を高めていくとしたアマルティア・センの潜在能力概念がある。この貧困概念は、1990年代以降の貧困削減のアプローチを検討する上で大きな影響を与えた。『DAC貧困削減ガイドライン』に盛り込まれている5つの能力を具体的に示したものが表2-1である。またそれら5つの能力は当然のことながら独立したものではなく、相関関係が強く、かつ横断的に関係する要素として「ジェンダー」、「環境」を位置づけている(図2-1)。これら能力の欠如や相関関係の機能不全が貧困の状態であるという定義は、貧困削減への取り組みが非常に多岐にわたる分野や横断的課題を対象としていることを示している。
引用:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/gai/hinkon/pdfs/jk05_01_02.pdf
模範解答
課題文中で説明されている貧困は、経済的能力、人間的能力、政治的能力、社会・文化的能力、保護能力の5つの潜在能力が欠如している状態である。対して一般的な「貧困」という語は、経済的能力の欠如のみを示す場合がほとんどである。また、経済的能力の欠如がその他の潜在能力の欠如も引き起こすという因果関係が語られる場合もある(お金がないから良い教育が受けられない、など)が、『DAC貧困削減ガイドライン』ではいずれの能力の欠如も相互に影響を与え合っていることが明示されている。
5つの潜在能力の欠如を貧困と定義するこの捉え方を以て、貧困削減のための取り組みを行う場合、私は2段階のアプローチが必要になると考える。
まず第1段階として、貧困を削減しようとする対象地域において、5つの能力のうちどれが貧困のボトルネックになっているのかを探ることが必要である。それぞれの要素は相互に影響するため、いずれかの要素に焦点を当てて確実に状況を改善していくことで、他の要素も改善が見込まれる。例えば、安全な水を確保するために1日に何時間も費やしているような人々がいた場合、つまり人間的能力の欠如がボトルネックになっている場合には、安全な水を各家庭ですぐに使えるようインフラを整えることによって、それまで水の確保に費やしていた時間を仕事に費やせるようになり、稼ぎが増えるだろう。
そして第2段階として、見定めたボトルネックを解消するための活動を行う。集中的かつ継続的に行っていくには、具体的な活動をローカルで行う組織と、それを支えるグローバルな仕組みが必要である。よって、その活動がどれだけ需要があり、どれだけの効果を与えうるのかを、それぞれが発信し続けることが重要だ。
このように、5つに分解された潜在能力の中でのボトルネックの発見と解消を、繰り返し行っていくことが、貧困削減に向けた着実な歩みになると私は考える。
(794字)
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以上、田口塾の西口でした!