映画『レイルウェイ 運命の旅路』を観ましたので、感想と考察を書いていきたいと思います。
主演はコリン・ファース、他にもニコール・キッドマンと真田広之が重要人物として出てきています。
※ネタバレを含みます
実話としても映画としても素晴らしい
全体を通して素晴らしかったです。最後に救われるストーリー、しかもそれが実話であるということ自体にも観客が救われます。
と同時に、ローマクスとナガセが最後に和解したとしても、やっぱり戦争は恐ろしすぎるものだとわからせてくれる映画でもあります。
観る側がその痛みを感じるのはもちろんなんだけど、出演者をはじめとする作る側の方々は、ある期間において仕事として戦争体験に向き合わなければいけないことになるので、大変だっただろうなと思いました。
ローマクスはなぜナガセを赦せたのか
彼がナガセを赦せたのは、彼が元々持っていた知性、出会った妻への愛、友人の死による命の大切さの再認識、ナガセに再会した時の経験が全て重なったからだと思いました。何十年も苦しんできた後に、やっとタイミングが合ったんだと感じました。
「終わらせる」の本当の意味は、ナガセを殺すことではなくて、自分たちの中の戦争を、相手を赦すことで終わらせることでした。それを、彼の知性が気付かせてくれたんだと思います。自分がすべきなのは、憎しみによる死の連鎖を止めることだと判断できたのです。
憎しみに打ち勝って、感情に流されずにその判断ができたのは、妻への愛からじゃないでしょうか。妻を大切にする人間がどうあるべきかと考えただろうし、妻という愛と癒しの存在がローマクスの心の中に宿っていたと思います。
また、最も大事なのは命だと気付いた、という主旨の言葉を言った時、ローマクスは直前に亡くなった友人の名前を呟いています。いま自分たちに命があることが何を意味するのか、この命を何に費やすべきなのか、ナガセの命を絶つことが救いになるのか…ナガセを目の前にして、迷いを繰り返しながら再考していたように感じます。
ナガセに会った時、彼は自分がされたように問い詰めました。でもナガセははじめ、完全には自分の罪を認めなかったんです。でも徐々に対話していき、ナガセのことがわかっていきます。その過程でローマクスは、認めない卑怯な奴ではなくて、ナガセ自身も辛すぎて認められないこと、ナガセも救いを求めていることに気付いていったんだと思います。
それから、自分が人にも話せず封印してきた傷を負った、あの部屋に入って、当時の自分を直視することになります。精神医学で言う「インナーチャイルドに向き合って癒す」みたいなことで、当時の自分を見つめて辛かった事実を受け入れ、涙を流したことで、気持ちの整理がつきやすくなったんだろうなと思います。
しかも、ローマクスが日本が劣勢である様子を伝えた時、ナガセは上の人に通訳しなかったんですよね。あの場面、国に関係なく全員が戦争の被害者であると感じざるを得ない、ただならぬ空気感でした。
ローマクスとナガセの関係性
ナガセは通訳しかしてないのになぜ恨みの対象になったのか、っていうレビューも多かったみたいです。
ただ、ローマクスにとっては直接コミュニケーションを取っていた相手がナガセだったわけで、指示を下していた日本人は奥に引っ込んでいたかもしれないし入れ替わりもあったかもしれない。でもナガセは彼の言葉を直接全て聞いた上で、彼への拷問を言葉で実行し続けていたんです。
だからナガセをよく覚えていて恨みを持っていたのも、当然だと思いました。
コリンファースとニコールキッドマン
今回の『レイルウェイ 運命の旅路』は2013年制作で、イギリスでは2013年12月公開、アメリカや日本では2014年公開でした。
ニコール・キッドマン主演の『Before I Go To Sleep』も2014年なので、この時期はニコール・キッドマンと仕事をする頻度がすごく高かっただろうなと思いました笑
以上、『レイルウェイ 運命の旅路』の感想と考察でした。
素晴らしい映画でした。コリンもニコール・キッドマンも真田広之も、若い頃のローマクスを演じたJeremy Irvine(ジェレミー・アーヴァイン)や、同じく若い頃のナガセを演じた石田淡朗も、選ばれるべくして選ばれたなぁと感じました。
これは『シングルマン』と並ぶくらい、人におすすめしたい映画でした!
コメント
[…] また、2014年に公開された『レイルウェイ 運命の旅路』(The Railway Man)で共演した日本人俳優がいました。石田淡朗さん!モネ・ゲームでは日本人集団の後ろの方にいる、脇役未満エキストラ以上みたいな役でしたが、The Railway Manを観ていたのですぐに気付けました。The Railway Manではコリンと石田さんが出るシーンが違うので、一緒に撮影をしたことがあるのかはわかりませんが、面白い縁だなと思いました。 […]